2022年4月13日、枚方市総合文化芸術センター別館(旧メセナひらかた会館)大会議室で、枚方市障害福祉サービス事業者連絡会の全体会を開催しました。
新型コロナウイルスの影響で、3月に開催を予定していましたが延期となり、対面とオンライン(Zoom)の両方で実施しました。
精神科病院で40年の社会的入院を強いられた当事者・伊藤時男さんが2020年9月、国を相手に訴訟を起こしました。社会的入院に対する国の責任を問う「精神医療国家賠償請求訴訟」です。これまで、社会的入院について、個々の精神科病院の責任を問う取り組みはありましたが、国の施策(不作為)を問う訴訟は初めてであり、関係者の間で注目されています。
枚方市では、枚方市自立支援協議会 精神障害者地域生活支援部会(精神部会)を中心に、行政・支援団体や医療機関が連携し、枚方市内の入院病棟をもつ精神科病院への訪問面接・地域移行・地域定着支援が2012年から取り組まれています。大阪府独自の「退院促進支援事業」を制度化し、地域移行等が取り組まれてきた経過があります。
他方で、個々の病院への働きかけや地域での支援だけでは限界もあり、地域移行を進め社会的入院を解消するためには、国の大胆な方向転換が求められていると考えます。
今回は、事業者連絡会と精神部会との共催企画として、精神医療国家賠償請求訴訟研究会事務局長の古屋さんをお招きし、講演を開催しました。また、長期入院を経験した精神障害当事者(陽だまりの会のピアサポーター)を交えたシンポジウムも実施しました。
●安田雄太郎 事業者連絡会会長 挨拶
本日は、お集まりいただき、ありがとうございます。
さて、本日は精神医療国家賠償請求訴訟を取り組まれている古屋さんを東京からお招きしております。また、陽だまりの会のピアサポーターの方々も交えたシンポジウムも予定しております。
枚方市における地域移行については、この間、事業者連絡会としましても、枚方市障害者計画の策定をはじめ、社会福祉審議会や自立支援協議会の場で、その推進に向け議論をしてきました。
しかし、現状は厳しいと言わざるを得ません。地域移行を進めるためには、地域での生活を支える行政施策とそれを担う事業者が必要不可欠です。ところが、枚方でも全国でも地域移行を阻む様々な障壁(バリア)があります。このバリアの背景には何があるのでしょうか。
私が当事者として感じるのは、障害のない多くの人にとって、心や体に障害がある状態になれば「自分の今が否定されても仕方ない」という感覚・価値観が、どこかにあるのではないでしょうか。誤解を恐れずに言えば、地域移行・地域生活を推進する立場の障害福祉行政の職員や、私たち事業者の支援者でさえも、「仕方ない」という価値観が全く無いと言い切れるでしょうか。
この訴訟とともに注目されている旧優生保護法の訴訟を巡っても、2月の大阪高裁判決、3月の東京高裁判決、いずれにおいても、国に損害賠償を命じる判決が出されました。国は最高裁に上告しましたが、この裁判の結果が、私たち障害当事者の権利、ひいては命の価値を測る社会の物差しの一つとなると考えます。
そして、古屋さんが取り組まれている「精神医療国家賠償請求訴訟」は、地域移行をスローガンだけで終わらせるのか、それとも、国・行政が本気で地域移行を進めるのか、その行方を大きく左右する裁判になると思います。
心や体に障害を負い、家族の支援がなければ、住み慣れた「我が家」にも住めなくなる。そんな社会を放置させていいのでしょうか。私たちの障害者支援の取り組みは、この社会における人間の自由を問うテーマがあります。
本日の古屋さんの講演、そして、入院生活を経験されたピアサポーターの体験を聴くことで、今後の枚方市における地域移行の推進の力にしていきたいと思います。
今後とも、事業者連絡会へのご理解ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
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