• 北井 遼太

ヘルパーの情報共有とプライバシー


ヘルパーの情報共有とプライバシー

 今回は、私が利用者として普段から介護を受けているなかで感じることや考えることをもとに書きました。あんゆうヘルパーへのアンケート調査でも「障害者に関する制度等の情報だけでなく、普段の介護生活に関するものも書いてほしい」という意見がいくつか出ていました。テーマは「ヘルパーの情報共有とプライバシー」です。


情報共有の副作用


 ヘルパーの皆さんはサービスに入る際に、情報共有を積極的に行っている方は多いと思います。利用者に関することや介護の方法等をヘルパー同士で共有することは、介護を安全に、効率的に行っていく上で重要です。

 一方、訪問介護は利用者と一対一で介護を行うことが多く、あんゆうは直行直帰(利用者宅に直接行き終わればそのまま帰る)のかたちをとっているため、他のヘルパーとそもそも会う機会が少なく情報共有する場面がなかなかないと思われます。

 そのため、メモ書きや付箋を利用する等の工夫をヘルパーの皆さんはされていると思います。


 さて、介護サービスにおいて重要なこの「ヘルパー同士での情報共有」ですが、副作用とも言える側面があると思います。それは、共有する情報のなかに利用者の個人的な情報もたくさん含まれていることです。

 例えば、利用者の栄養管理をするためにヘルパー同士で食事内容や量、時間等を共有していくとします。そうすれば、当然ながら利用者の食生活に関することは、ほとんどヘルパーが把握していることになります。体調管理のためとして尿や便の様子を記録すれば、それもヘルパー全員が把握するわけです。

 これらの情報は、一般的に利用者が1日に介護してもらう時間が長ければ長い程多くなります。食事のことで言えば、24時間介護の人の場合、食べるもの全てヘルパーが把握できるということになります。


 ここで大事なのは、利用者自身がどこまで自分のことをヘルパーに知られて良いと思っているかです。一人ひとりその感覚は違うと思います。できるだけ個人的なことは秘密にしておきたい人もいれば、あまり気にしない人もいるでしょう。ここでヘルパーの皆さんに意識してほしいのは、利用者のその感覚をしっかり把握し尊重することです。端的に言ってしまえば、利用者が共有してほしくないと思っている情報は共有しないでということです。


感じた気味悪さ


 では、僕自身はどうかと言われると、もちろん共有してほしくない情報はたくさんあります。いや、むしろ多いほうかもしれません。

 自立生活を始めるまではプライバシーのことで悩むとは想像もしていませんでした。始めたての頃は情報共有のために、サービス時の記録をヘルパー全員に読んでもらっていました。そうすると、毎日の行動のほとんどをヘルパー全員が把握している状況になります。特に、食事のことについてはだいだい書かれていたので、僕が普段何を食べているのかは筒抜けです。

 ヘルパーと話をしている時に「この前○○を食べたんですが…」ということを言うと、「ああ、そういえば書いていましたねえ。」といった反応が返ってきました。僕が自ら食べたものについて話す前にすでに知っているわけです。これが一回だけならまだ良いのですが、ほぼ毎回同じような返答がきます。何度か繰り返しているうちに気味悪く感じるようになってしまいました。

 結局、記録から情報収集されることがないように、僕のサービスに入る際は他ヘルパーが書いた記録を読むのを禁止させてもらいました。また、何を記録するのかも再検討しました。


 僕が一番不快に思う原因は、自分の知らない間にヘルパー全員に知れ渡っているという部分です。僕が関わらないところでヘルパー同士が情報共有を行うと、こういうことが起きます。「自分の知らない間に」と「どのヘルパーまで伝わっているのかわからない」という二つの事柄は、実際その状況になってみるとやはり心地よいものではありませんでした。


 情報共有そのものを否定しているわけではありません。必要な場合も多いと思います。例えば、知的障害者の利用者でヘルパーに要望を上手く伝えられない場合は、共有される情報が重要です。利用者本人からあまり情報が得られない時やタイミングが限られる時は、積極的に共有したほうがよいでしょう。

 しかし、逆を言えばそうではない場合も存在します。しっかりとコミュニケーションがとれる利用者もたくさんいます。その場合は、できるだけ利用者本人から情報を集めるべきだと僕は思います。

 普段の介護の中で本人と関わり合って得られる情報は、どんな介護を求めているか、何に困っているか、生活をどんなものにしていきたいかをより明確にしてくれるでしょう。


利用者とのコミュニケーションが大切


 さらに言えば、ヘルパー同士での情報共有は時々間違った伝わり方をしている気がします。伝言ゲームが失敗することが多いように、人から人へ伝える時にやはりズレが生じてしまうことがあります。そもそも、共有していることそのものが利用者から直接聞いたことではなく、多分そうだろうという思い込みだったりもします。


 例えば、また食事の話にはなりますが、僕はジャンクフードが好きでピザやハンバーガー等をよく食べるのですが、それを見たヘルパーは「北井君は濃い味付けが好きなんだ」と思ったようで、さらにその認識が少しずつヘルパー同士で広がり、一時期、毎日毎食出てくる料理の味付けが濃いことがありました。確かに濃い味付けのものは好きなのですが、毎食食べるのはつらくて普段の料理は濃くなくて良いと思っています。その後いろんなヘルパーに濃い料理は好きだがいつもそうでなくて良いと伝えると、皆さん意識してくださるようになりました。

 毎日長時間の介護に入ってもらっていると、ヘルパーに伝えたいこと覚えてもらいたいことはとても多く、その中で勘違いがどうしても生じてしまいます。それは利用者の伝え方が悪いとかヘルパーの聞き方が悪いとかではなく、絶対に起こる仕方のないことだと思います。僕が料理の味についてヘルパーに説明し勘違いを解消したように、利用者とたくさんコミュニケーションをとるなかで正しい情報を得ていけば、間違った認識のまま利用者が求めていない介護をしてしまうことを防ぐことができるのではないでしょうか。


 先ほども書きましたが、情報共有そのものを否定しているわけではありません。ただ、いろんな側面があることを意識していただきたいのです。プライバシーの問題やヘルパー同士で共有する時の情報のズレなど、気を付けなければいけない部分があります。利用者本人のことを理解し、どんな生活がしたいのかを意識すれば、共有すべき情報と秘密にしておくべき情報が明確になってくると思います。


個人情報

「国や地方自治体、事業者などが扱う各種の情報のうち、(生存する)個人の情報で、特定の個人を識別できる情報。氏名・生年月日・性別・住所・家族構成など。また、購入商品記録、病歴・通院記録など、個人の私生活が露わになるおそれのある情報。」(小学館「デジタル大辞泉」)


プライバシー

「個人や家庭内の私事・私生活。個人の秘密。また、それが他人から干渉・侵害を受けない権利。」(小学館「デジタル大辞泉」)



あんゆうピアサポーター 北井 遼太

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