六條友聡さんの講演まとめ【大阪・関西万博のバリアフリーと「茨木市障害者差別解消条例」制定の取り組み】
- あんゆうピアサポート

- 2025年6月5日
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●大阪・関西万博バリアフリー
万博などを開催する際は、たいてい国土交通省のガイドラインなどが基本となり作り上げられることが多いが、今回開催される万博は独自の新たなガイドラインを作っていくという形で始まりました。そのガイドラインの基準はバリアフリー法や大阪府福祉まちづくり条例が参考となっていました。その後、博覧会協会が独自にガイドライン作成を進め、2021年7月に大阪関西万博ユニバーサルデザインガイドランとして完成プレリリースされます。しかし、ガイドラインには作成段階から関わったのが博覧会協会内の限られた人のみであることや、その経過や情報も博覧会協会以外には一切知らされず、当事者参画もないなど多くの問題がありました。
登壇された六條氏は作成の経過に不安を覚え、2021年6月自身の所属する移動等円滑評価会議・近畿分科会の中で大阪関西万博のバリアフリー状況について確認したところ、何も意見が出なかったということを聞きました。その後も、大阪市内の当事者団体から大阪市、大阪府、博覧会協会への働きかけや9月の移動等円滑評価会議、DPIから国への働きかけなどを経て、ようやく2021年12月にガイドライン改訂に向けてのユニバーサルデザイン検討会が行われます。会長は近畿大学の名誉教授の三星先生です。近畿分科会の委員と会長推薦を合わせた41名で当事者委員は15名という構成です。
検討会は12月、1月、3月の3回行われ、1800項目の意見がでましたが、この3回の検討会では不十分という事で分科会が設置され、そこでは車いす席、エレベーター・エスカレーター、トイレ、カームダウン・クールダウンエリアなど多くのものが検討されました。
ガイドライン改訂では、2020東京オリンピック・パラリンピックのガイドライン(大阪関西万博とは対照的にガイドライン作成時に当事者参画が行われる)を引き継ぎ、さらなる発展とされ、ガイドラインの基本的な考え方として以下4つが話し合われました。
1 誰一人取り残さないアクセシブルでインクルーシブな社会に向けて
2 「アクセシブルでインクルーシブな博覧会」を契機とした、より高いユニバーサルデザインを目指す
3 アクセシビリティとインクルージョンの基本原則(基本原則はIPC国際パラリンピック協会ガイドが基本原則と掲げる「公平」、「尊厳」、「機能性」)
4 障害当事者などの参画による評価と意見反映~ユニバーサルデザインワークショップの積極的奨励
アクセシブルでインクルーシブな博覧会を整備するためには、施設を計画・設計・建設するそれぞれの立場の人がこのガイドラインで示している推奨基準を積極的に採用することが望ましく、推奨基準を採用する事がどうしても困難な場合でも、少なくとも規制基準を満たすことが最低限の要件です。
具体的なバリアフリーについては、以下の事が改訂されました。
・車いす座席について
分散配置、同伴者席設置、サイトラインの確保、バギー使用児、ベビーカーなど
・エレベーターについて
17人もしくは24人乗り、扉幅110cm~もしくは100cm、片袖(視覚障害の人が利用しやすい)・袖なし(推奨基準)
・エスカレーターについて
上り下り並列の場合は向かって左を進行方向に(統一視覚障害の人が利用しやすい)
・カームダウン・クールダウンについて(発達障害、自閉症、感覚過敏、認知症などを持つ人々が、感覚刺激やストレスによるパニックを軽減し、気持ちを落ち着かせるための空間。視覚的な刺激を最小限に抑える設計が一般的)
カームダウン・クールダウンスペース、同様のセンサリールームの設置
(これらの取り組みは関空エアポートリノベーションバリアフリー検討会からの積み上げが大きい)
施設整備に関してはユニバーサルデザイン・ワークショップの取り組みが行われ、これらは客席、ホール、ウォータープラザ野外席、エレベーターエスカレーター、大催事場、大屋根リングの配置、カームダウン・クールダウンなどで行いました。
例えば、エレベーターは車椅子利用者の他にたくさんのベビーカー利用者の想定を見込んで、同時に車椅子とベビーカー等併せて4台は乗る事のできる24人乗りが推奨されました。
カームダウン・クールダウンエリアについては壁、床、設置物で頭などをぶつけてケガをしないための素材選択や、会場で効果的な休憩ができる配置などの意見が取り入れられました。
車椅子席はガイドライン改訂前は車いす席が端っこの席や後方の席の決められた場所でしたが、席を前後左右に配置を分散し、同伴者席やベビーカー利用客でも利用できるような形となり、柵の高さやサイトラインの確保も取り組まれ、これまでにあった見えづらさの解消を目指しました。
視覚障害者の会場移動については、点字ブロックとインターロッキングブロックとの適切な輝度比の確保について、モックアップ(実際に使えるかどうかを試作段階で、設計上の課題や修正点を見つけるために製作される)検討会を行い、適切な輝度比の確保の問題について模型を用いて検討した結果、黄色の点字ブロックの両側に濃いグレー系のインターロッキングブロックを一列配置すると、輝度比が十分確保できるようにする取り組みも行われました。
トイレについてはさまざまな人が来ることを想定し、機能の分散を図りや性的マイノリティの人にも配慮したオールジェンダートイレ、大型ベッドの設置、フラッシュライト、手すりなどにこだわり、それらを集約したものとしてヘルスケアパビリオンでは「みんなのトイレ」として出来上がりました。
施設整備のガイドライン以外にも交通アクセスに関するユニバーサルデザインガイドラインでは、例えば夢洲駅でのエレベーターの大きさや乗り降りの仕組み、片袖でボタンの押しやすい視覚障害者にも使いやすいものが推奨されています。
サービス面での展示、催事、演出、飲食、物販などのユニバーサルサービスガイドラインについても多くの当事者の意見が取り入れられており、例えば手話対応や車椅子介助、アプリを通じた案内補助など、さまざまな障害に配慮した接遇や案内方法が考慮されています。
大阪関西万博のガイドラインは改訂前に比べ、かなり改善されましたが、大きな問題点も残りました。例えば、今回の万博が多くの事をスマホを介して行う事になっており、それによりスマホの操作ができない視覚障害者、知的障害者、ガラケー使用者、年配者などにとっては不便な博覧会となっています。万博に行くのも情報を取るのも楽しむのも、スマホの使用に要素が偏りすぎているとの批判が六條氏のもとに寄せられたと話されました。
また、会場の運営面についての問題が大きく、例えば、パビリオン間によってばらつきが大きく、全体的に運営状況に追われてサービスが十分でないという報告があります。例えば、聴覚障害の方のための手話対応では、人手がなく十分に対応できていなかったり、障害者手帳の提示や優先案内がいい加減であったり、カームダウン・クールダウンエリアについての周知ができていない上、その効果が発揮できないような運営状況を作っているなどです。
講演の後半には質疑応答の時間が取られましたが、そこでも運営面の課題を感じるものがありました。
例えば、実際に万博に行った質問者からは、障害者手帳の提示が省略されていること、障害者の料金の割引が限られたチケットでしか受けることができないなどが挙げられ、手続きを省いて時間短縮するような対応が基本となっているのではないかというものでした。六條氏は運営側が細かい対応をする余裕がないことは十分に想像できることであり、このことから障害者手帳の不提示による不正、間違った優先認識による不公平な案内が生じるなど、運営体制の不足や効率を優先するあまり細かい対応がおろそかになっていると指摘されました。
他にも根本的な問題として、万博会場が開催終了後に取り壊すことを前提として作られているために全体的に規模が小さく作られているため、来場者にとって不便である点や当事者参画を通して出来上がった多くのバリアフリー、ユニバーサルデザインが残されない点も残念だと述べています。
この点についても会場から質問があり、万博を通して出来上がったバリアフリー、ユニバーサルデザインが今後日本で建物、交通、サービスや人の意識などさまざまな領域においてどう刷新され、発展させていくかという問いがありました。
六條氏からこの点についてまず博覧環境会の姿勢について話され、それは本来は必要なはずの万博についての今回開催の運営が適切に行われていたかなどの全体的な評価、改善点などの検討を博覧会協会が今後も行わないことが伝えられました。続けて、私たち自身で現地へ行き、万博のバリアフリーやユニバーサルデザインについて評価し、意見を集約していく必要があるということ。そして、当事者からの声を届けていくことが大切だと述べられました。
そして、改めて当事者参画の重要性が挙げられ、ユニバーサルデザインや合理的配慮において、当事者が最初から最後まで意見を出し、それがきちんと反映されているか、実際に利用しやすいかということを検証・評価することが必要であり、法律・ガイドラインが整備される中、基準さえ満たしておけばよいという風潮があり、それらを満たすだけでなく、質・量ともにきちんと現実に対応できているかが大切で、それについて当事者がきちんと評価できることが今後は重要になってくると述べられました。
最後に障害者権利条約とオリンピック・パラリンピック、バリアフリー・ユニバーサルデザインの進展と今後の進展についてまとめました。
2006年 国連・障害者権利条約採択
2013年 IPC(国際パラリンピック委員会 )ガイドライン、障害者差別解消法制定
2014年 障害者権利条約批准
2017年 ユニバーサルデザイン2020行動計画 Tokyoアクセスシビリティガイド
2018年 バリアフリー法改正(基本理念、マスタープラン、定期的見直し、評価会議)
当事者参画の評価会議・分科会を各地に配置
2020年 バリアフリー法改正(公立小中学校義務化等)
2022年 情報アクセシビリティ・コミュニケーション法 万博ユニバーサルデザインガイドライン改訂
今後のバリアフリー・ユニバーサルデザイン進展については、以下のような流れがあると紹介がありました。
・トイレ、駐車場、劇場等の客席に関するバリアフリー法の改正について(2025年6月1日施行)
・大阪府福祉まちづくり条例(2025年6月改訂)
・2027年に横浜市で開催される国際園芸博覧会
●「茨木市障害者差別解消条例」制定の取り組み
【茨城障害フォーラムについて】
もともとは8つの当事者団体の連絡会があり、市から補助金をもらって連絡会が作られていましたが、補助金が廃止となり連絡会の存続が危うくなりましたが、皆の意見として横のつながりがなくなってしまうのは良くないという意見が聞かれたことで差別禁止法制定を目標に茨木障害フォーラムが2015年に発足しました。
この間、社会的な動きとしては2013年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(差別解消法)」が制定され、障害者権利条約の批准などがありました。
【法令の整備年表】
2006年12月 国連にて障害者権利条約が採択
2007年9月 日本が権利条約に署名
2011年6月 障害者虐待防止法の成立(2012年10月施行)
2011年8月 障害者基本法改正
2012年6月 障害者総合支援法の成立(2013年4月施行)
2013年6月 障害者差別解消法の成立(2016年4月施行)
2014年1月 障害者権利条約の批准
2016年4月 障害者差別解消法の施行
2016年4月 大阪府障がい者差別解消条例も施行
2018年4月 茨木市障がいのある人もない人もと、共に生きるまちづくり条例の施行
【条例制定に向けて】
当初、大阪府での条例制定も考えましたが、大阪府での条例制定となると範囲が大きく、相談や対応が異なってくることから、茨木市で独自に作った方が良いのではないかということになり、茨木市の条例の制定を目指しました。条例の制定に向けて障がいフォーラムの記念講演で有識者の講演を行い、そこに市議会議員にも来てもらうなどして障害者の問題を知ってもらい、条例に結びつけてもらえるように働きかけを行いました。その結果、市の福祉部長とも協力して検討会を設置し、部会を立ち上げて分科会の下に専門部会を作る運びとなりました。専門部会では4回の検討会を行いますが、それでは足りずにワーキンググループを作り、そこでも検討を重ねました。
【条例文のポイント】
・民間事業者による合理的配慮の提供、義務、相談の仕組み、あっせん、勧告、公表を踏まえる、より実効性のある仕組みを作る
・合理的配慮助成、事業者に対しての啓発
合理的配慮の提供支援に係る助成金も市の独自予算(法律では地域の実情に合わせて、予算の上乗せ、横出しができる)で導入され、事業者側が折り畳み式スロープや高さ可動式のテーブル、筆談ボードなどの物品購入や段差解消、手すりの設置、スロープの設置、点字ブロックなどの工事の施工、点字メニューの作成などのコミュニケーションツールにかかった費用について利用できます。
茨木市障害者差別解消条例について知ってもらうため、1年目は市の商店などさまざまな場所を回り、周知活動を行いました。2年目からは1年目の経験をもとに制度の周知を主に市の広報で行うようになりましたが、事業者はもちろん当事者も制度を知らないことがあり、社会福祉協議会、学校、商工会議所など、さまざまな方々と連携しながら活動を続けています。
続いて障害理解促進事業は、障害に対する理解を促進するために、障害についての模擬体験学習や当事者を講師とした研修会、啓発についての講演会の開催、障害当事者との交流会などを行うための費用を助成するというものです。
障害についての理解の促進ということで、例えば、阪急バスとの接遇研修があります。手動・電動車椅子の違いについての説明やデモンストレーション、乗降時の介助などを行い、実際にバス会社側にさまざまな障害当事者の立場を体験してもらうなどして、少しずつ理解が深まり、接遇の改善ができているという実感があります。障害当事者からのバス会社への苦情から始まった取り組みで10年間行ってきましたが、この間、取り組みを続けてきて気づいたことは、バス会社と障害当事者の研修という小さな取り組みに終始せず、取り組みをさらに社会的、または全体的にして公的な場へと発展させていくことが大切だと感じました。研修も途中からバス会社だけでなく、バス会社の上位団体である近畿運輸局が関わるようになり、その時にはバス会社側の取り組み方がより真剣に向き合うようになるなど、変化が見られました。
この後、京阪や近鉄のバス会社について声をかけて研修を行うなど、さらに取り組みが広がっていきました。そして、他にも研修を受ける側が研修を受けてどう感じたかなどを当事者側も受け止めて、双方向で積み上げていくことが大切だと強調されました。
【取り組みのこれから】
・合理的配慮の提供支援に係る助成金や「茨木市障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例」の周知
・障害理解促進事業補助金の周知
現在も周知が十分ではなく、年々制度を利用する人が減っており、最初の年は300万円ほどあり、利用された予算も、その後はコロナ禍の影響もあり、だんだんと利用件数が減少し、令和5年、6年度は予算、利用が100万円程度へと減少しています。行政が制度の予算を当事者団体に知らせずに勝手に減額していたこともあり、これについては、六條氏は予算の減額は仕方ないとして、当事者団体へ相談するべきではないかと苦情を伝えられたと述べられました。
制度の利用が徐々に減少していることについて、六條氏は危機感を持っており、事業者はもちろん、当事者も制度について知らないことや、制度の必要性が十分に伝わっていないこともあり、制度の周知や理解促進を広げて、制度を利用して持続的なものにしていく必要があると述べています。周知に関しては、事業者からはなかなか制度を知る機会がないなどの声があり、商工会議所や商店街などと連携を深めて、会議などの場で資料を渡すなど、情報が事業者全体に周知されるような取り組みをしていかなければならないと述べています。
障害理解促進事業補助金についてもまだまだ知られておらず、実際にあまり利用されていないため、多くの人々に働きかけて、制度を利用してもらい、必要性を理解してもらわなければならないと述べています。社会福祉協議会からの働きかけで学校などで行う福祉体験学習を通じて、障害について興味を持ってもらう取り組みを行っていますが、先日も六條氏が道端で小学生から声をかけられたということがあったそうです。このように少しずつ障害当事者について、身の回りにある障害について、ユニバーサルデザインについて興味を持ち、知り、考えてもらうことが大切だと述べられました。
あんゆう総務部企画担当/介護福祉士 八城 隆裕




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